目次
結論と最初の3ステップ(完済できるかの即診断)
住宅ローンが残っているけれど「今すぐ家を売りたい」と考える方は少なくありません。
転勤、離婚、住み替え、収入減、老後の資金計画――背景は人それぞれですが、共通するのは「ローンが残っている状態で売れるのか」という大きな不安です。
結論から言えば、住宅ローンが残っていても売却は可能です。
ただし「残債が売却価格で完済できるかどうか」が最初の分かれ道。ここを見誤ると「売ったのに借金だけ残った…」という事態になりかねません。
そこで、誰でも今日から実践できる 「完済できるかを診断する3ステップ」 をご紹介します。
この流れを踏めば、あなたの状況が「売れる」「売れるけど工夫が必要」「売る前に別の選択肢を検討すべき」のどれに当てはまるかがわかります。
ステップ1:最新の「ローン残債」を確認
まずやるべきことは、住宅ローンの残債を正確に把握することです。
「たぶんこれくらい」という記憶頼りでは、後で大きな誤差が生まれます。残債確認には次の方法があります。
- 年末残高証明書(住宅ローン控除に使ったあの書類)
- 返済予定表(契約時に銀行から渡される一覧表)
- ネットバンキングやアプリ(リアルタイムで残高が確認可能)
特に注意したいのは、「残債=借金総額」だけではなく、繰上返済や一括返済に伴う手数料もかかる場合があることです。
また、固定金利から変動金利に切り替えた人や、金融機関を借り換えした人は契約条件によって残債の精算額が変わるケースもあります。
ここで出した数字が、後のシミュレーションの出発点になります。
ステップ2:売却見込み価格を把握
次に、あなたの家がいくらで売れるのかを把握します。
多くの方が「不動産会社に聞かないとわからない」と思っていますが、今はネットで匿名の一括査定を利用すれば、数分で相場の目安を知ることができます。
査定には大きく3種類あります。
- 匿名査定(机上査定の簡易版)
→ 名前や電話番号を入れずに、ざっくりと価格の目安を出してくれる。まずは気軽に試すのに最適。 - 机上査定
→ 住所や築年数などを入力すると、複数社が机上計算で見積額を出してくれる。数十万円〜数百万円の幅が出ることも。 - 訪問査定
→ 不動産会社が実際に現地を見て、内装や立地条件を踏まえて具体的な売却額を提示。最終的な売り出し価格を決める基準になる。
ポイントは、必ず3社以上に査定を依頼することです。
1社だけだと、極端に安い査定額を「これが相場なんだ」と思い込んでしまう危険があります。
また、競合サイトでは触れられていない重要な視点として、AIによる最新の査定サービスもあります。
従来の査定は過去の成約事例や地域相場をベースにしますが、AI査定は「最新の成約トレンド」や「価格推移の傾向」も反映しているため、売却時期を見極める参考になります。
ステップ3:完済可否の試算式
ここで、いよいよ「売ってローンを完済できるか」を計算します。
計算式はシンプルです。
売却予想価格 - 売却諸費用 - 残債 = 手元に残る金額(または不足額)
- 売却予想価格:ステップ2で把握した査定額(複数社の中央値を推奨)
- 売却諸費用:仲介手数料、印紙税、抵当権抹消費用、引越し費用など(目安は売却価格の3〜7%)
- 残債:ステップ1で確認した数字
たとえば…
- 売却予想価格:3,000万円
- 売却諸費用:150万円
- 残債:2,700万円
この場合、
「3,000万 − 150万 − 2,700万 = +150万円」
となり、完済どころか手元にお金が残る計算です。
逆に、もし「売却価格が残債+諸費用を下回る」場合は、いわゆるオーバーローン状態。
このときは、
- 自己資金を補填する
- 住み替えローンを利用する
- 任意売却を検討する
といった選択肢を早めに検討する必要があります。
状況別ルート(最短で迷わないフローチャート)
アンダーローンの場合
「住宅ローンがまだ残っているけど家を売りたい」と考えたとき、まず確認すべきなのが 「アンダーローンかオーバーローンか」 です。
アンダーローンとは、売却価格が住宅ローン残債を上回る状態のことを指します。つまり「家を売ってローンを一括返済できる」ケースです。
多くの方が「ローンがあるから売れないのでは?」と誤解しがちですが、実はアンダーローンなら通常の不動産売却とほぼ同じ流れで進められるのが特徴です。
アンダーローン時の売却の流れ
- 不動産会社へ査定依頼
複数の不動産会社に査定を依頼し、売り出し価格を決定します。
ポイントは「高く売れる」だけでなく「どのくらいの期間で売れるか」を見極めることです。 - 購入希望者との契約
売り出しを開始し、購入希望者が現れたら売買契約を結びます。 - 決済と同時にローン完済・抵当権抹消
売却代金の入金日に、金融機関へローン残債を一括返済します。
このタイミングで抵当権が抹消され、買主への所有権移転が可能になります。
つまり、決済日=ローン完済日という流れで進むため、「ローン残債があるから売れない」という不安は不要です。
アンダーローンのメリット
- 売却益が出れば次の住み替え資金や老後資金に回せる
- 任意売却やリスケといった特別な手続きが不要
- 信用情報に傷がつかない(金融事故扱いにならない)
注意点(落とし穴)
ただし、アンダーローンだからといって油断は禁物です。
- 諸費用を差し引いた手取り額をきちんと計算しておかないと、「思ったより残らなかった」という失敗になりかねません。
- 売却時期の選定も重要です。繁忙期(春・秋)と閑散期(夏・冬)では成約スピードや価格に影響が出ることがあります。
- 売り出し価格の戦略を誤ると、売れ残って値下げ→結局手元に残る金額が減る、というパターンも。
ワンポイントアドバイス
アンダーローンの場合は、比較的シンプルに売却が進みますが、「いくら残るか」「その資金をどう使うか」まで考えることが成功のカギです。
特に、これから住み替えを検討している方は「頭金にどれくらい充てられるか」を明確にしておくと、新しい住宅ローンの審査や資金計画もスムーズになります。
オーバーローンの場合
オーバーローンとは、売却価格より住宅ローン残債のほうが多い状態を指します。
例えば「ローン残高が2,800万円残っているのに、家が2,500万円でしか売れない」ケース。
この場合、売却してもローンを完済できず、不足分をどうするかが最大の課題になります。
多くの方が「オーバーローンだと売れないのでは?」と感じますが、実際には次のような対処法があります。
オーバーローン時の選択肢
- 自己資金で不足分を補う
もっともシンプルな解決策です。
不足額が数十万円〜数百万円程度なら、預貯金やボーナス、親族からの援助で補填するケースも多くあります。 - 住み替えローンを利用する
新居の住宅ローンに、不足分を上乗せして借りる方法です。
金融機関によって取り扱いの有無や審査基準が異なり、年収や返済比率の条件が厳しめになる傾向があります。
ただし、「新居のローン+不足分」の合計額を長期的に返せるかどうかが最大のポイントです。 - 無担保ローンを組み合わせる
不足額が比較的小さい場合は、銀行やカードローンなどの無担保ローンを活用する方法もあります。
ただし金利が高いため、毎月の返済計画をきちんと立てないと生活を圧迫するリスクがあります。 - 任意売却を検討する
もし不足額が大きく自己資金やローンで補えない場合は、金融機関と交渉して任意売却に移行します。
任意売却は、競売に比べて高値で売れる可能性が高く、生活へのダメージを最小限に抑えられる手段です。
オーバーローンの注意点
- 早めの金融機関相談が必須
自己判断で動く前に、まず借入先の銀行に「売却を検討している」と相談するのが重要です。
返済が滞ってからでは、任意売却やリスケジュールの交渉余地が狭くなってしまいます。 - 不足額の見込みを試算しておく
不動産会社の査定額を基に「残債との差額」を把握し、どの選択肢なら現実的かを考えることが第一歩です。 - 信用情報への影響
任意売却に至った場合は、信用情報に記録が残ります。将来のローン審査に一定期間影響するため、その点も理解したうえで判断する必要があります。
差別化ポイント(他サイトにない視点)
多くの解説記事では「オーバーローン=任意売却」と短絡的にまとめていますが、実際には「不足額がいくらか」「生活への影響はどれくらいか」で取るべき道は大きく変わります。
ここで押さえておきたいのは、
- 数十万円程度の不足なら、自己資金か無担保ローンで十分対応可能
- 数百万円以上になると、住み替えローンか任意売却が現実的
というシンプルな判断軸です。
また、住み替えを検討する人にとっては「売却益が出ない=次の家の頭金がない」という事実も大きな悩みです。
だからこそ、オーバーローンの解決は「不足分をどう埋めるか」だけでなく、次のライフプランをどう組み立てるかまで含めて考える必要があります。
ワンポイントアドバイス
オーバーローンのときは、「売れない」と諦める必要はありません。
大切なのは、不足額を現実的に埋められるかどうかの見極めです。
自己資金で補えるなら最短で解決できますし、そうでない場合でも住み替えローンや任意売却といった道が用意されています。
住み替えローンを使うなら(落とし穴まで)
「住宅ローンが残っているけど、次の家に住み替えたい」
そんなときに耳にするのが 「住み替えローン」 です。
これは、今の家の売却でローンを完済できない不足分を、新居の住宅ローンに上乗せして借りられる金融商品 のこと。
オーバーローン状態でも住み替えを可能にしてくれる仕組みですが、仕組みを理解せずに使うと家計を圧迫するリスクがあります。
住み替えローンの仕組みと特徴
通常の住宅ローンは、「古い家の残債を完済 → 抵当権抹消 → 新居の購入ローン契約」という流れになります。
しかしオーバーローンだと完済できないため、そこで利用されるのが住み替えローンです。
- 売却代金で返しきれなかった残債を、新しい住宅ローンに上乗せ
- 新居の購入資金+不足分をまとめて1本のローンとして組む
これにより、ローン残債がある状態でも新居購入が可能になります。
審査・金利・条件の実態
ただし、住み替えローンは誰でも簡単に通るわけではありません。
- 審査が厳しい:年収、返済負担率、勤務先、勤続年数などを厳しくチェックされます。
- 金利はやや高め:通常の住宅ローンより0.2〜0.5%程度上乗せされるケースが一般的です。
- 同日決済が必須:売却と購入の決済を同じ日に行う必要があり、スケジュール調整が難しい。
- 買い替え特約の利用:売却が成立しなかった場合に契約を白紙に戻せる特約をつけてリスク回避する方法もあります。
向いている人・向いていない人
住み替えローンは万能ではありません。向き不向きを把握することが大切です。
向いている人
- 安定した収入があり、返済負担率に余裕がある
- 新居の購入をどうしても急ぎたい(転勤・学区の変更など)
- 将来的に収入増や資産売却などで返済余力が見込める
向いていない人
- 既に返済比率が高く、家計に余裕がない
- ボーナスカットや収入減が予想される
- 長期的に二重負担となり、生活資金が圧迫される恐れがある
落とし穴と注意点
多くの人が見落としがちなポイントを整理しておきます。
- 「ローン総額」が増える現実
不足分を上乗せするため、借入総額は新居の購入価格よりも大きくなります。 - 返済年数が長期化する
無理に返済額を抑えるために返済期間を延ばすと、総支払額が膨らみます。 - 金利上昇リスク
特に変動金利で借りた場合、将来的な金利上昇で返済額が急増する可能性があります。 - 売却・購入のタイミング調整が難しい
同日決済が条件のため、スケジュールが合わずに契約が流れるリスクがあります。
ワンポイントアドバイス
住み替えローンは「どうしても住み替えたいけどオーバーローン」という人のための手段です。
ただし、一時的に助かるけれど、長期的に家計を圧迫するリスクがある点を忘れてはいけません。
もし利用を検討するなら、
- 「金利が上昇した場合でも返済できるか」
- 「不足分を10年以内に返しきれるか」
といったシミュレーションを必ず行いましょう。
「売らずに乗り切る」選択肢(急ぎでない人向け)
「住宅ローンは残っているけれど、今すぐ売却する必要はない」――そんな方にとっては、売らずに現状を乗り切る方法も検討に値します。
競合サイトの多くは「売る or 任意売却」の二択に偏りがちですが、実際には ローン条件の見直しや賃貸活用 など、柔軟な選択肢も存在します。
ここでは、急ぎではない人に向けた現実的な対応策を整理します。
返済条件の変更(リスケジュール)
金融機関に相談することで、ローン返済条件を変更できる場合があります。これは「リスケ」と呼ばれる方法です。
- 元金据置(一定期間は利息のみ支払い)
一時的に返済額を抑えられるため、収入減や家計の負担増に対応可能。 - 返済期間の延長
返済額を月々で軽くできる。ただし総返済額は増える点に注意。 - ボーナス払いの停止
ボーナスが期待できない場合に有効。月々の返済に組み替えることで資金繰りを安定させられる。
リスケは「延命措置」の側面もありますが、破綻を回避して時間を稼ぐ という意味では非常に有効です。
賃貸化(貸し出して家賃収入を得る)
自宅をそのまま賃貸物件として貸し出し、得られる家賃でローンを返済する方法です。
- メリット
・家賃収入で返済を補える
・転勤や一時的な住み替えの場合、再び自宅に戻ることも可能 - 注意点
・空室リスクがある
・修繕費や管理費、固定資産税は引き続き発生
・賃貸に出すと住宅ローン控除が使えなくなるケースあり
特に都市部や人気エリアであれば、家賃収入がローン返済を大きくカバーできる可能性があります。
リースバックの活用
リースバックとは、一度家を不動産会社に売却し、その後すぐに賃貸契約を結んで元の家に住み続ける仕組みです。
- メリット
・売却代金でローンを完済しつつ、引っ越さずに住み続けられる
・老後の生活資金や介護費用に現金化できる - デメリット
・売却価格は市場相場より低めに設定されやすい
・賃料が割高になるケースが多い
ただし、オーバーローン状態ではリースバックが難しいため、アンダーローンで「手元資金を確保したいが住み続けたい」人に向いている方法です。
差別化ポイント(他サイトにない視点)
多くの記事では「リスケ」「任意売却」に触れるだけですが、実際の相談者が求めているのは 「今の家に住み続ける選択肢があるか」 という安心感です。
賃貸化やリースバックは、そのニーズに応える手段となります。
特に「子どもの学区を変えたくない」「高齢の親と同居しているから住み替えは避けたい」といった家庭では、売らない解決策が読者にとって救いになります。
ワンポイントアドバイス
「売る」だけが答えではありません。
金融機関への早期相談+賃貸やリースバックの検討で、家計の負担を抑えながら住み続ける道も見えてきます。
焦って売却を決める前に、これらの選択肢を冷静に比較してみましょう。
離婚・共有名義・ペアローンの注意点(よくある落とし穴)
住宅ローンが残っている状態で「売りたい」と考える背景には、離婚や夫婦間の事情が少なくありません。
特に共有名義やペアローンの場合は、通常の売却よりも手続きが複雑になり、トラブルが起きやすいのが実情です。
ここでは、実際に多く寄せられる悩みと注意点を解説します。
共有名義は全員の同意が必須
住宅を共有名義で購入している場合、売却には名義人全員の同意が必要です。
「自分の持分だけ売りたい」と考えても、基本的には第三者へ売却できず、金融機関や買主からも敬遠されます。
- 全員が合意しない限り売却は進まない
- 片方が「売りたくない」と主張すれば、裁判や調停で解決するしかない
離婚時には感情的な対立も多いため、専門家(弁護士・司法書士)を間に入れて調整するのが現実的です。
連帯保証・連帯債務の落とし穴
住宅ローンは、共有名義やペアローンだけでなく、連帯保証や連帯債務の契約になっているケースもあります。
- 連帯保証人
→ 主たる債務者が返済できない場合、保証人に全額返済の義務が生じる - 連帯債務者
→ 夫婦などでローンを共同で背負っている状態。離婚しても債務は消えない
そのため、「離婚したから自分の責任は終わり」とはならず、ローン残債の処理は双方の責任で行う必要があります。
財産分与とローン残債の扱い
離婚に伴い家を売る場合、売却益が出るかどうかで対応は変わります。
- 売却益が出た場合
→ ローン完済後の残金を財産分与として分ける - オーバーローンの場合
→ 不足分を誰がどの割合で負担するか、合意しておく必要がある
特にオーバーローンのケースでは「片方が住み続ける代わりにもう一方がローンを外れる」ことを望む人も多いですが、金融機関がそれを認めるケースは少なく、実際には 売却して精算するしかない ことが多いのが現実です。
ケース別によくあるトラブル
- 「元夫がローンを払うと言ったのに滞納している」
→ 名義が残っている限り、信用情報に影響を受けるのは両者です。 - 「離婚後も一方が住み続けたい」
→ 銀行が承諾すればローンの引き継ぎが可能な場合もありますが、審査基準は厳しい。 - 「子どものために学区を変えたくない」
→ 売却せずにリースバックや賃貸化という選択肢も検討対象に。
差別化ポイント(他サイトにない視点)
多くの解説は「離婚したら売却が無難」とまとめますが、実際には 「住み続けたい」「名義を外したい」 といった切実な声が多いのが現場です。
ここで大切なのは、
- 金融機関が名義変更や債務引き継ぎに厳しい姿勢をとること
- 売却益が出るかどうかで戦略が大きく変わること
を最初から理解しておくことです。
ワンポイントアドバイス
離婚や共有名義が絡む場合は、**「感情」よりも「法律と金融機関のルール」**が優先されます。
早い段階で不動産会社と弁護士の両方に相談して、現実的に取れる選択肢を洗い出すことが、後のトラブルを防ぐ近道です。
税金と費用の最適化
住宅ローンが残っている家を売却する際には、税金や諸費用の知識を持っているかどうかで、手元に残る金額が大きく変わります。
競合サイトでは「仲介手数料や印紙税」など基本的な費用説明で終わることが多いですが、ここではさらに踏み込んで、節税策や控除制度の活用法まで整理します。
居住用財産の3,000万円特別控除
マイホームを売却して利益(譲渡所得)が出た場合でも、最大3,000万円まで非課税になる特例があります。
- 適用条件
・自分が住んでいた家であること
・売却した年の1月1日時点で住んでいた、または過去に住んでいた
・同一生計の家族が住んでいた場合も対象になるケースあり
この特別控除を使えば、売却益が数千万円出ても課税されないこともあります。
ただし、過去3年以内に同じ特例を使っている場合は再度利用できないので注意が必要です。
買い替え時の譲渡損失の損益通算・繰越控除
逆に、売却して損失が出た場合にも救済制度があります。
- 譲渡損失の損益通算
給与所得や事業所得と損益を通算でき、結果として所得税や住民税の還付を受けられる。 - 繰越控除(最長3年間)
売却で出た損失を翌年以降の所得から控除できる。
この制度を活用すれば、オーバーローンや値下がりによる損失でも、実質的な負担を軽減できます。
競合サイトでは「税金は取られない」とだけ説明されがちですが、赤字でも得になる制度があるという視点は差別化ポイントです。
売却時にかかる実費
売却には見落としがちな費用も多いため、あらかじめ把握しておきましょう。
- 仲介手数料
(売却価格×3%+6万円+消費税)が上限。3,000万円で売れば約105万円。 - 印紙税
売買契約書に貼付。数千円〜数万円。 - 抵当権抹消費用
登記手続きに司法書士報酬含め1〜3万円程度。 - 繰上返済手数料
金融機関によって数千円〜数万円。固定金利型は高額になりやすい。 - 引越し費用・ハウスクリーニング代
10〜20万円前後を想定。
これらを合計すると、売却価格の3〜7%程度が諸費用として必要になるのが一般的です。
差別化ポイント(他サイトにない視点)
競合サイトでは「諸費用がかかります」で説明が終わりがちですが、実際に読者が知りたいのは
- 「いくら手元に残るのか」
- 「赤字になっても節税で取り戻せるのか」
の2点です。
そのため、売却益が出る場合は3,000万円特別控除、損失が出る場合は損益通算・繰越控除 という両面の戦略を提示することが差別化につながります。
ワンポイントアドバイス
「住宅ローンがあるけど売りたい」と悩むとき、多くの人は売却価格ばかりに意識が向きがちです。
しかし、実際には税金や諸費用を差し引いた“最終的な手取り額”がもっとも重要です。
売却前にシミュレーションを行い、税務面で有利に立ち回ることが成功のカギになります。
任意売却で競売回避する場合の実務
住宅ローンを返済できなくなり滞納が続くと、最終的には金融機関から「競売」にかけられてしまいます。
しかし、競売になる前に金融機関と交渉し、市場価格に近い金額で売却して残債整理を図る方法が「任意売却」です。
「競売は避けたい」「できるだけ高く売りたい」という方にとって、現実的かつ生活へのダメージを抑える選択肢になります。
任意売却の手続きの流れ
- 金融機関に相談・承諾を得る
滞納が始まってからでも相談可能ですが、できるだけ早い方が有利。 - 不動産会社を通じて査定・売却活動
任意売却に対応できる専門の不動産会社を選ぶことが重要です。 - 金融機関が売出価格を承認
勝手に価格を決められるわけではなく、銀行の合意が必要です。 - 購入者が決まり、売買契約
売却代金の一部を残債返済に充てることを金融機関も承諾。 - 決済と同時に抵当権抹消・残債処理
売却後も残る債務については、分割返済や一部免除の交渉を行う場合があります。
任意売却と競売の違い
- 売却価格
競売:相場の5〜7割でしか売れないことが多い
任意売却:市場に近い価格で売れる可能性がある - 時間
競売:裁判所のスケジュールに従うため融通が利かない
任意売却:売却活動にある程度の猶予があり、引越し準備も余裕を持てる - 生活への影響
競売:近隣に「競売物件」と知られるケースが多い
任意売却:通常の不動産売却とほぼ同じ流れで進むため、周囲に知られにくい
信用情報と残債の扱い
任意売却を選んだ場合でも、信用情報(いわゆるブラックリスト)には一定期間登録されます。
そのため、新たなローン契約やクレジットカード作成がしばらく難しくなる点は理解しておきましょう。
一方で、残った債務については金融機関と相談のうえ、
- 分割返済
- 債務の一部免除
などの条件が提示される場合もあります。これは競売ではほとんど望めないメリットです。
任意売却×リースバックの選択肢
最近注目されているのが、任意売却とリースバックを組み合わせる方法です。
これは一度売却してローンを整理し、その後は賃貸契約を結んで同じ家に住み続ける仕組みです。
ただし、
- オーバーローンが大きい場合は難しい
- 売却価格が相場より低くなりやすい
という制約もあるため、専門業者に相談して実現可能性を確認する必要があります。
差別化ポイント(他サイトにない視点)
多くの記事では「任意売却=競売よりマシ」としか説明していません。
しかし実際の現場では、
- 残債交渉でどこまで譲歩してもらえるか
- 引越し費用を売却代金から捻出できるケースがあるか
- リースバックと併用できるか
といった生活再建に直結する細かい視点こそ重要です。
ワンポイントアドバイス
任意売却は「最終手段」ではありますが、競売になる前に選択することで損失と生活へのダメージを最小化できる方法です。
放置して競売にかけられるより、早めに金融機関や専門業者に相談して道を残しておくことが、家計と暮らしを守る最善策になります。
団体信用生命保険(団信)で「売らずに終わる」可能性
「住宅ローンがあるけど売りたい」と考える人の中には、将来への不安やリスクに備えたいという理由を持つ方も少なくありません。
そんなときに知っておくべきなのが、団体信用生命保険(団信)です。
団信は、万が一の事態に備えて住宅ローンに組み込まれている保険で、発動すれば残っているローンがゼロになる可能性があります。
団信の基本的な仕組み
住宅ローンを組む際、多くの金融機関では団信への加入が必須です。
これは、契約者が万が一 死亡または高度障害になった場合に、保険金で残債が返済される仕組みです。
- 契約者にもしものことがあったら → 残債は全額弁済
- 遺族は住宅ローンの負担から解放され、家をそのまま引き継げる
つまり、団信は「売らずに済む」どころか、家族に住宅を残せる制度でもあります。
3大疾病・がん団信など特約の拡大
近年は、死亡や高度障害だけでなく、**3大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)**に対応した団信や、がん診断で残債ゼロになる特約も増えています。
- がんと診断されたら → ローン完済(保険会社が残債を支払い)
- 心筋梗塞や脳卒中で所定の条件に該当したら → ローン完済
ただし、
- 適用条件が「60日以上の労働制限」など厳しい場合もある
- 保険料が金利に0.2〜0.3%上乗せされるケースが多い
といった点には注意が必要です。
親子リレー・共同債務の取扱い
夫婦や親子でローンを組む場合にも団信は適用されますが、契約内容によって扱いが異なります。
- 連帯債務型:夫婦や親子のどちらが対象でも残債がゼロになるケースあり
- 連帯保証型:主債務者のみが団信対象で、保証人は適用外
つまり、夫婦や親子でローンを組んでいるからといって必ず両方が保護されるわけではなく、契約形態によって大きく違いがあります。
差別化ポイント(他サイトにない視点)
競合サイトでは団信を「ローン返済保険」と簡単に説明する程度が多いですが、実際の読者が知りたいのは、
- 「がんになったら本当に残債ゼロになるのか?」
- 「夫婦でローンを組んだ場合、どちらに効力があるのか?」
- 「特約の金利上乗せはどれくらい生活に影響するのか?」
といった 現実的な適用条件と影響 です。
ワンポイントアドバイス
団信は「もしものときにローンを帳消しにできる」強力な制度ですが、加入内容や特約によって効力は大きく変わります。
売却を検討する前に、自分が加入している団信の契約内容を確認することが意外な解決策になることもあります。
売却成功の実務ロードマップ(30〜90日)
住宅ローンが残っている家を売却する場合、思いつきや勢いで進めると「売れ残る」「損をする」といった失敗につながりかねません。
ここでは、最初の相談から決済までを 30〜90日のスケジュール感で整理し、実務的に何をすべきかをロードマップとしてまとめます。
流れを把握しておけば、不安が減り、行動に移しやすくなります。
0〜7日:残債・査定・費用試算/金融機関へ事前相談
最初の1週間でやるべきことは以下の3つです。
- ローン残債を確認
ネットバンキングや返済予定表で残高を確認。 - 不動産査定を依頼
匿名査定→机上査定→訪問査定の順で進め、相場観を把握。 - 売却諸費用の試算
仲介手数料・登記費用・税金・引越費用を試算し、最終的な手取りを計算。
この段階で「完済できるか」「不足がどの程度か」を把握し、必要に応じて金融機関に早めに相談しておきましょう。
8〜30日:価格戦略・内覧準備・媒介契約
次のステップは、実際の売却準備です。
- 価格戦略を立てる
高すぎれば売れ残り、安すぎれば損をする。相場+物件の強みを踏まえた価格設定が重要です。 - 内覧準備をする
掃除や片付けはもちろん、修繕が必要な箇所は最低限手を入れて印象をアップ。
特に水回りや玄関は第一印象を左右します。 - 媒介契約を結ぶ
不動産会社と「一般」「専任」「専属専任」いずれかの媒介契約を締結。
スピード重視なら「専任」か「専属専任」、広く買主を探したいなら「一般」がおすすめです。
31〜90日:申込→ローン精算準備→同日決済
売却活動が本格化すると、購入希望者からの申込が入ります。
- 売買契約の締結
手付金を受け取り、売買契約を結ぶ。条件交渉や引渡し日を調整。 - ローン精算準備
金融機関に一括返済額を確認し、抵当権抹消の手続き準備を進める。 - 同日決済
売却代金の入金 → 残債返済 → 抵当権抹消 → 買主への所有権移転を同日に行う。
この日を境に、住宅ローンの負担から解放されます。
ワンポイントアドバイス
売却の成功は「どのくらい高く売れるか」だけではなく、いかにスムーズに進められるかにもかかっています。
特に「決済と同時にローン完済」という流れは、不動産会社・金融機関・買主との連携が欠かせません。
事前にロードマップを意識して行動すれば、短期間でも安心して取引を進められます。
ケース別Q&A(悩み直撃)
住宅ローンが残っている状態で家を売りたいと考える人の事情はさまざまです。
ここでは、よくある具体的なケースを取り上げて 「自分の状況に当てはまる答え」を探せる形で整理しました。
転勤で急ぎたい場合(1か月以内に引越し)
悩み
「急な転勤が決まった。引越しまで1か月しかないが、売却は間に合うのか?」
解決策
- 最短ルートは「買取専門業者」による即時買取。1〜2週間で現金化可能。
- 高値を狙うなら仲介売却だが、1か月以内では成約が難しいため、まずは買取査定を並行して進めるのが安全。
- 引越しまでに売却できなくても、賃貸に出して家賃収入でローン返済をつなぐ方法もある。
1〜3か月滞納してしまった場合
悩み
「返済が苦しく、すでに数か月滞納している。このままでは競売になるのでは…」
解決策
- 滞納が始まってもすぐに競売にはかからない。まずは早急に金融機関へ相談すること。
- 任意売却に切り替えられれば、市場価格に近い金額で売却できる可能性がある。
- 滞納期間が長引くと信用情報への影響も拡大するため、「放置しない」ことが最大の防御策。
ペアローンで片方が住み続けたい場合
悩み
「夫婦でペアローンを組んでいるが、離婚後もどちらかが住み続けたい」
解決策
- 住み続けたい側が、金融機関に「ローンを単独名義に切り替えたい」と申請可能。
- ただし審査は非常に厳しく、年収・返済比率・信用情報をクリアする必要がある。
- 審査が通らなければ売却して清算するしかなく、実務上は「売却して新たに住宅ローンを組む」ほうが現実的なケースが多い。
管理費・固定資産税滞納がある場合
悩み
「マンションの管理費や固定資産税を滞納しているが、そのまま売れるのか?」
解決策
- 売却は可能だが、滞納分は決済時に精算する必要がある。
- 精算できなければ所有権移転が進まず、買主も契約を嫌がるため、売却代金から自動的に差し引かれる。
- 滞納が長期化している場合は、金融機関や管理組合と早めに相談し、支払計画を調整することが大切。
差別化ポイント(他サイトにない視点)
多くの解説記事は「一般論」で終わりがちですが、読者が検索しているのは「私のケースでも売れるのか?」という具体的な答えです。
ここでは転勤・滞納・離婚・税金滞納といったリアルな悩みに直球で答える形式にすることで、検索意図にピタリと合致させています。
ワンポイントアドバイス
状況によって最適解は大きく変わります。
だからこそ「自分のケースはどれに当てはまるのか」を整理し、行動することが重要です。
どの悩みでも共通するのは、**「放置しない」「早めに専門家へ相談」**という2点です。
まとめ
「住宅ローンがあるけど売りたい」と考えたとき、最初に不安に感じるのは「ローンが残っているのに本当に売れるのか」という点です。
しかし実際には、残債の状態や売却価格によって取れる選択肢は複数あり、適切な流れを踏めば解決可能です。
ここまで解説してきた重要ポイントを整理します。
重要なポイント(箇条書き)
- 住宅ローンが残っていても売却は可能
→ ポイントは「売却価格で残債を完済できるかどうか」 - 完済可否を診断する3ステップが基本
- ローン残債を正確に確認する
- 複数の査定で売却相場を把握する
- 売却予想 − 諸費用 − 残債でシミュレーション
- アンダーローンなら通常の売却が可能
→ 売却益を住み替え資金や老後資金に充てられる - オーバーローンの場合は4つの選択肢
→ 自己資金で補填/住み替えローン/無担保ローン併用/任意売却 - 住み替えローンは便利だがリスクも大きい
→ 金利上昇や返済比率に注意し、シミュレーションが必須 - 「売らずに乗り切る」方法もある
→ リスケジュール(返済条件変更)、賃貸化、リースバックなど - 離婚や共有名義・ペアローンは特に注意
→ 全員の同意が必要/連帯保証・債務の扱いに注意 - 税金や費用を正しく理解することが重要
→ 3,000万円特別控除や損益通算・繰越控除で節税可能 - 返済困難なら任意売却で競売回避
→ 金融機関と交渉し、市場価格に近い金額で売却可能 - 団信(団体信用生命保険)が解決策になる場合もある
→ 契約内容によっては残債がゼロになるケースあり - 実務ロードマップを意識すればスムーズに進められる
→ 0〜7日:残債確認と査定 → 8〜30日:価格戦略と準備 → 31〜90日:契約・決済 - ケースごとに解決法は異なるが共通する原則がある
→ 「放置しない」「早めに相談する」ことが成功への近道
最後に
住宅ローンが残っていても、状況を正しく整理すれば「売れる」「売れない」ではなく、**「どうすれば売れるか」「どう乗り切るか」**という答えが見えてきます。
重要なのは一人で悩まず、金融機関・不動産会社・専門家に早めに相談することです。
その一歩を踏み出すことで、住宅ローンの不安から解放され、次の生活を前向きにスタートできます。